山崎節子氏:維持可能な開発目標(SDG16+)の実現に向けたアジア諸国への日本の開発協力(15/03/2019)


 協会監事の山崎節子氏はアジア諸国が直面する開発問題に対して日本がグッド アドバイザーの役割を担うとしたら、日本がどのような政策援助を行えるか考察し、三つのパラダイムシフトをすることを提案された。その要旨は以下のとおりである。


  1. 第一のパラダイムシフトとして、中所得国には資金援助のみならず開発戦略など、彼らの直面する問題へのアドバイスの強化を提言する。東南アジアのラオス、ベトナム、カンボジアは、近年中所得国の仲間入りを果たし、新たな課題に直面している。無償援助の割合が減り、投資、外国直接投資、送金、市場での資金調達に移行している。また、中所得国の特徴として、社会的には、格差が生まれ、特に不動産投資による所得格差のみならず、地域格差、男女格差、教育や世代間格差など格差は広がっている。当該国の開発戦略や政策作りが、SDG達成に繋がり、国連など他の援助機関と連携してグッド アドバイザーとして担える役割の一つである。
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  3. 第二の開発協力のパラダイムシフトとして、後発開発途上国には、経済だけでなく、人的資源、社会と環境を含めた持続可能な開発目標(SDGs)を総合的に俯瞰する行政の役割をSDG16の支援としていく事を提言する。ラオスもカンボジアも中所得国でありながら、国連の分類によると依然後発開発途上国であり、人的資産および経済と環境面で脆弱であるという認識が必要である。限られた人的資本がさらなる開発の潜在性を阻み、また、投資にしても、経済的環境的危機を含んでいる。また、気候変動や異常気象のため、特に大雨による洪水、海水の河川への流入などにより、自然災害や就業人口の多い農業への影響がある。持続可能な開発目標は経済だけでなく、もっと総合的な見地から見ていく必要がある。
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  5. 第三のシフトは東南アジアの国々は現在人口ボーナス期にあり、将来の高齢化に備えた政策、組織、システム作りの時期にあるという認識にたって、日本の経験を共有する。日本ができる最高のアドバイスは開発途上で一回だけ享受できる人口ボーナス期の恩恵を最高限度に生かすことである。将来への公的システム(社会保障、年金など)、組織、法制度を築き上げていくための研究、分析、多様な参加者による協議、そして政策提言である。具体的には、産業構造の高度化や経済の付加価値化、それに伴う教育、訓練など人的資産の育成など長期的ビジョンへのアドバイスを指す。また日本の苦い経験から学ぶものも多い。例えば、女性の社会進出を支える法律だけでなく、それを支えるシステムや実践の重要性、気候変動や異常気象に対するレジリアンスを構築する政策、公官庁間のチェック & バランスを包含する制度作りなどが挙げられる。また、将来の危機に備えたリスク マネジメントや第4次産業革命のメガトレンドに備えるなど、幅広い視野を持ってガバナンスを考える支援も必要であろう。


 各々の分野での支援はすでに始まっているが、さらに総合的に俯瞰する行政の役割はSDG達成のために必要と思われる。

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