第8回GPAJ難民危機研究会『グローバル・マイグレーションと国際組織』(20/10/2023)
世界の人の移動の現状について概観。人の移動に影響を与える世界的変化、移民の定義、様々な移住の形態に触れつつ、近年更に急増する不正規移住・混合移住(Mixed Migration Flows)に伴い地中海ルートや中南米・北米ルートで多数の移民が犠牲になっている状況を指摘。第二次世界対戦後の欧州における難民・避難民・余剰人口対策のために設立されたIOM(設立時の名称はICEM)が2016年に国連機関になるまでの歴史をたどりつつ、国連システムによる「安全で秩序ある正規の移住のためのグローバル・コンパクト」(2018年採択)の実施状況、今後の移住政策へのコロナ禍の教訓、人の移動に関連するSDGsの分野における人道・開発・平和の連携(ネクサス)の実践例などを紹介した。喫緊の課題としては、人の移動と関連するグローバル課題(気候変動など)における多国間協力の推進と台頭する自国優先主義や反移民感情の克服。また日本で地方自治体を中心に独自の発展を遂げてきた「多文化共生」の意義にも触れ、グロバールな視点から日本国内・地域社会における移民の社会統合を進めていく事の重要性を強調した。発表後の意見交換では、移住政策におけるIOMの提言活動、IOMとUNHCRの連携、国連システムにおける将来的なIOMのステータス、正規移民・不正規移民への対応、日本の将来的な移民の社会統合における課題などが議論された。