日本国際平和構築協会研究大会 分科会1 国連平和活動における政策の変遷 (02/12/2017)

 東大作上智大学准教授、国連リベリアミッション事務総長特別代表補佐の久村俊美氏、広島平和構築人材育成センターの高澤洋志氏、外務省総合政策局国際平和協力室の津矢田絢子主査、立命館大学の廣野美和准教授が活発な討論を展開した。

 第一回日本国際平和構築協会研究大会において、分科会1は国連平和活動における政策の変遷について、4人のパネリストが研究発表を行った。このパネルは東京大学大学院のキハラハント愛准教授がモデレーターを務めた。


 まず、東大作上智大学准教授より国連PKO活動の3つの段階の変遷について解説があり、それに続いてこれから日本がどのように国連PKO活動や平和活動に参加するべきかについて発表がなされた。(詳細は東氏作成の概要を参照)。伝統的な停戦監視から、平和構築、文民保護へと役割が拡大した一方で、付加的な役割である文民保護のニーズに照らして国連PKOの兵力が不足しているというジレンマがある。期待の高まりへの反動として、失望から信頼喪失にいたる事態を避けるべく国連PKOの限定的な性格について現地の住民、政府に対し、粘り強い広報活動が必要である。日本の今後の取り組みとしては、伝統的なPKOへの派遣を検討し国連PKO活動への参加を維持すること、インフラや人つくりなどの平和構築活動を発展させること、自衛隊派遣による施設、通信、空輸などの貢献を越えて、法制度支援、インフラ整備など文民派遣による幅広い貢献を検討すべきである。


 次に国連リベリアミッション事務総長特別代表補佐の久村俊美氏より、「国連平和活動に関する国連ハイレベル委員会報告書」及び「平和構築アーキテクチャーについての検討・報告書」に基づくグテレス事務総長による国連事務局の政治部と平和維持活動の部門の統合についての提言に関して、国連ミッション(コソボ、リビア、リベリア、UNDPアフガニスタン)及び欧州安全保障協力機構(アルバニア)での経験に基づくフィールドの視点からの考察が紹介された。対象国の現状に即した現実的な安保理決議の必要性、フィールドの予算配分について総会と安保理の協調及びミッションの政治的・安全状況を反映した適正な予算配分、ミッション立ち上げや撤退の際のアセスメントの強化・アカウンタビリティ、国連諸機関の協調・統合、地域機関とのパートナーシップ及び強化・運営のための取極め・予算支援、平和構築委員会の検討に基づき、常駐調整官(RC)の業務・報告義務の強化の必要性など多岐にわたる課題が存在する。


 続いて広島平和構築人材育成センターの高澤洋志氏より国連PKO活動を支える概念の変遷と、現状について報告がなされた。(詳細は高澤氏作成の概要を参照のこと)。「保護する責任(R2P)」と「文民の保護(POC)」という二つの概念は、冷戦終結後のいくつかの事例を経て発展した。2011年のリビア介入とシリア不介入の結果、近年、R2P概念の後退が論じられているが、2015年にルワンダによって提示された文民の保護に関する「キガリ原則」は、R2P概念の「第2.5の柱」を推進する原則と捉えることができる。ただし、この「第2.5の柱」の進展は武力行使と国際(行政)権力の拡大を促進する可能性があり、そうした権力を制御する仕組みを整える必要もある。


 最後に外務省総合政策局国際平和協力室の津矢田絢子主査から国連PKO要員の能力構築にかかる日本の取り組みに関し、国連アフリカ施設部隊早期展開プロジェクト(ARDEC)について紹介された。これは国連が進める三角パートナーシッププロジェクトであり,平成26年9月の国連PKOハイレベル会合において、安倍総理より、PKOに派遣される施設部隊が迅速に任務を開始するため、資金面での貢献と人的な貢献を一体として行うことが表明され2015年から日本が支援してきているもの。具体的には、自衛隊施設部隊に所属する陸上自衛官を本プロジェクトが実施されているケニアのPKOセンターに国連の専門家として派遣し、周辺国のPKO要員を集めて重機の操作や整備訓練を行うものである。スイス、ブラジルも本三角パートナーシップを高く評価し、ARDECにそれぞれ教官を派遣している。日本としてはこれまで得意としてきた分野で、日本らしい貢献を展開していくことが効果的である。


 以上の4氏の発表に対し、立命館大学の廣野美和准教授がコメントした。4氏の発表は国連PKOが平和構築・文民保護へと拡大するにつれてそれらの政策を現実化することが困難になっていくというジレンマ、国連本部とフィールドの間での認識の乖離、日本としての取り組みの方向について、具体的な事例をもとにした示唆に富んだ分析であったとの見解が提示された。これらの報告が示唆するものの一つとしては、文民保護等の政策に関して現実的に大いなる困難を伴っていることが挙げられる。PKOを行うにあたっては現実的な対応が必要であり、人々の国連PKOへの失望を招くことのないようにするためには、PKOの活動範囲の縮小もオプションとして検討されるべきである。また国連PKO活動の質的かつ量的な拡大について報告されたが、その活動を可能な限り現地化することにより、より効率的なものにしていくことが必要である。日本の得意分野での貢献の実績は素晴らしい。さらにアジア諸国との協調による貢献の可能性も検討していくべきである。

 分科会のラポターは東京大学校友会登録国際機関銀杏会共同代表の中沢賢治氏が務め、この報告は中沢氏と東京大学大学院斉藤有希氏によりまとめられた。

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