[鈴木賢一] アフターコロナは国連議員総会、そして世界連邦へ!

 政党事務局部長代理の鈴木賢一氏が、「70年以上前にアインシュタイン博士や湯川博士が唱えた構想を今こそ」と訴える。


アフターコロナは国連議員総会、そして世界連邦へ!
70年以上前にアインシュタイン博士や湯川博士が唱えた構想を今こそ


鈴木賢一/政党事務局部長代理

アフターコロナは、国連議員総会、そして世界連邦へ!


 新型コロナウイルスのパンデミックに陥った国際社会に遭ってブラウン元英首相は、医療・経済両面の危機に対応するために一時的な「世界政府」設立まで呼びかけた。地球規模の感染拡大下では、一国による対応では限界があり、各国が連携協力して対策を打つべきと考えるのは当然である。ところが現実には、米中の対立が貿易分野から新型コロナウイルス発生源をめぐる対立に飛び火し、国連安保理や世界保健機関での政策協調の議論に影を落としている。

 このような国際情勢に身を置く時、70年以上も前にアインシュタイン博士らが唱えた世界連邦構想の必要性を再認識させられる。世界連邦は、国連を改組して構築するが、前者と後者で決定的に違う点がある。国連が乗り越えられなかった、主権国家の平等を原則とするウェストファリア体制、さらに政府間主義を超越した理念に基づいて、世界連邦が設計されるという点である。

 本稿では、世界連邦運動(WFM)の提唱者が目指している世界議会とその前段階と位置付けている国連議員総会(UNPA)について検証する。その担い手になり得る各国の国会議員らが国際的規模で集い議論する列国議会同盟(IPU)とアジア政党国際会議(ICAPP)の活動に着目し、その活用の仕方について検討し、世界議会を構想しつつ、国連議員総会設立への方策を検討する。

【世界議会と国連議員総会】
 世界連邦構想における世界議会は、国家議院と人民議院の二院制からなる。国家議院は、各構成国の政府代表で組織するものであり、現在の国連総会として実現している。人民議院は、各構成国の人民により直接選出された議員で組織するものであり、いまだに実現していない。

 世界連邦運動が中心になって2007年から国連議員総会キャンペーンをスタートしている。国連には、国連総会(UNGA)が設置されているのに、なぜ国連議員総会を目指すのか。感染症対策をはじめとする地球規模課題には、超国家的発想が不可欠である。ところが、ウェストファリア体制に基づく国連における意思決定で加盟国は、他国を犠牲にしても国益第一を基準に投票行動するからだ。

 また、国連は、政府間主義、すなわち加盟国の政府代表、行政機関の集合体であり、執行を監視する議会機能を有していない。よって国連での議論や意思決定には、マイノリティーの意見の反映が困難でもあるからだ。

【国連議員総会創設への道のり】
 世界連邦運動は、議会主義を具現化した世界議会の創設まで段階的進化が必要だと想定している。初期段階として、国連憲章22条に基づくか、あるいは新たな多国間条約を成立させるかして、諮問的機能の国連議員総会の設置を提案している。総会構成員は加盟国からの与野党の議員とする。総会での投票では、秘密投票などの採用により、選出された議員を自国の利害から解放し、国際主義的発想からの意思決定を促す。長期的には、国連憲章109条の改正により、世界市民の直接選挙で議員を選出する立法機関・世界議会への発展的解消を構想している。

【列国議会同盟】
 紛争の平和的解決を促す議員の世界機関として1889年に発足した列国議会同盟は、今日では世界179か国の議会の国際的連合組織へと発展している。主たる活動は、各同盟国の議会が自国の行政府をしっかりチェックできるよう議会権能の強化、自国政府の外交活動の監視能力を向上させるために経験を共有し、議論を重ねることだ。

 国連総会のオブザーバーになり、国連との関係を深化させている。ただし、国連活動を独立した立場からチェックするとの展望はなく、あくまで活動の主眼は、各同盟国の議会が政府のチェック能力を高めることとにとどめている。

【アジア政党国際会議】
 政党独自の役割を通じてアジアの地域協力を推進することを目的として2000年、フィリピン下院議長らが中心になってアジア国際政党会議を設立した。参加者にイデオロギーも与野党も問わない。国会で一定の議席を確保していれば、どんな政党にもオープンな組織である。

 現在では、アジア52か国の352政党に参加資格があり、アジア最大級の政治対話の場へと成長している。近年では中南米、アフリカの政党との定期交流、2018年から欧州政党、2019年からは北米政党との定期協議もスタートさせ、世界規模の政党組織へと着実に歩んでいる。

【国際主義、議会主義の視点】
 以上概観してきた国連総会、列国議会同盟、アジア政党国際会議、国連議員総会、世界議会を「国際主義」、「議会主義」という視点で整理する。

 「国際主義」は、独立した国民国家や民族固有の文化の存在を認めながら、その違いを超えて諸民族や諸国家の間の協力促進、平和的な共存を図ろうとする考え方と定義できる。その視点から見た場合、現存する国連総会、列国議会同盟、アジア政党国際会議の3機関は、各国の主権が侵されない範囲で他国や他民族との協力を図ろうとしている。国連議員総会、世界議会への参加議員には、世界全体の利益の立場から意思決定できるよう秘密投票制度の導入が検討されている。

 「議会主義」は、国民を代表する議会において国家の最高意思を決定していく政治方式と定義できる。その観点からは、国連総会は列国議会同盟と連携しているものの、自前の機関を有していない。列国議会同盟とアジア政党国際会議はもちろん、議会主義に基づき機能している。国連議員総会、世界議会はともに国連が有していない議会機能を導入、強化しようとしている。

【国連議員総会設立への提案】
 アジア諸国の政府や与野党に対して以下の通り提案する。

1)列国議会同盟が国連総会のオブザーバー・ステータスを活かし、国連活動のチェック機能の強化を図るよう促す。

2)アジア政党国際会議が将来の国連議員総会の受け皿になり得ることから、同会議に積極参加し、同総会設立に向けて賛同政党を増やす。

3)国連総会でアジア政党国際会議からのオブザーバー・ステータス要望議案が審議されれば、賛成する。

4)国連総会が憲章22条により国連議員総会設立決議を提案した場合に賛成する。

5)国連議員総会キャンペーンを主導している国々から国連議員総会設立に関する多国間協定が提案された場合に協力する。

【終わりに】
 新型コロナウイルスのパンデミックに世界各国が対応する中、諸国が連携して対処する必要性に迫られている。70年以上も前にアインシュタイン博士らは、こうした事態に対処するための処方箋として、世界連邦構想を打ち出した。コロナ禍にある今こそ、将来を見据えてウェストファリア体制を越える国家間の結束、協力を促す国連議員総会、その先の世界議会、そして世界連邦体制を構築するために議論を深化させる時である。

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